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東日本大震災:復興に立ち上がる中小企業家の記録⑩

東日本大震災の被災地、岩手県中小企業家同友会より滋賀県中小企業家同友会へメールをいただきました。
同友会のつながりと仲間の知恵が、被災地の課題解決・元気づくりに役立っています。
転載します。

「同友の湯プロジェクト第1弾~本日開店!「同友きぼうの湯」

 震災から2週間が過ぎました。気仙支部の拠点、陸前高田ドライビングスクールを訪れる人は益々増えています。広大な教習コースには、自衛隊や消防、警視庁の援助部隊が拠点を設け、人の出入りが頻繁にあります。全国同友会の救援物資の配送本部として、気仙支部の会員の拠り所として、また報道各社も同友会の動きに興味を持ち取材チームがひっきりなしに訪れます。

 困ったのはトイレです。これだけの多くの方が利用するにも関わらず、水が流れず、劣悪な環境が続いていました。また救援部隊の方々や、ドライビングスクールに住み込む社員にとっても2週間を超える期間、シャワーも風呂も浴びられない状況は、精神的にも体力的にも厳しく、表情にも疲れが見えてきていました。
 避難所での臨時の風呂開設や浴場へのバス配送などもありますが、こうした最前線で救援に携わっている方々こそ、利用できる機会はありません。「この人たちが倒れたら終わりだ。同友会の力でなんとかならないか」気仙支部長の田村さんからの切実な願いでした。

 トイレの環境回復と気兼ねなく使えるシャワー、風呂の設置。緊急にこの2つが実現できないか。全国の皆さんの義援金を力に、「同友の湯プロジェクト」がすぐ動き出しました。信幸プロテック(株)村松幸雄社長が現場リーダーになり、翌日にはカラーの設計図がe.doyuに掲載され、協力者が募られました。「明日朝6:00に出発します。今用立てできていないのは、○○と・・・」たった一日で建築、電気、設備の10人のプロフェッショナルがつながり、必要な材料すべてが揃いました。

 「水がない。だったら沢水かわき水はないか」「ありますが7~800メートルほど離れています」「それで十分。水がないなら、あるところから持ってくればいい」中小企業の知恵と人のネットワークは、危機にこそ想像を超えた力を発揮します。ないなら新しく作ればいい。現場では壁にぶつかる度に、設計図にはない新たな工夫が加えられながら進んでいきました。

 沢水を吸い込む管の先には、布で覆われた消防用の大きなカゴが付けられます。これは簡易の濾過装置です。ポンプで汲み上げられた沢水は、草地を700メートル走り、農業用の大きなオレンジ色のタンクに溜められます。そこから一方はトイレの水洗へ、もう一方は消毒液が加わり、給湯器を通ってシャワー室、そして風呂場へ。
 「今日は無理かな」夕暮れもすすみ、諦めかけた18時。雪の降る中、ちょろちょろとお湯が沸き出しました。同友の湯プロジェクトチームは、たった一日で水がない場所に湯を沸かし、風呂設備をつくってしまいました。待ちこがれた湯の温かさは格別でした。

 トイレの臭いは全くなくなりました。シャワーが3機、風呂室が一つ。そして脱衣場兼、みじたく場には、鏡やドライヤーも設置されました。「女性の方々にとって、一番大事なこと」村松さんの奥さんのアドバイスで、様々な小物も準備されました。すのこも、足ふきマットも万全です。
 知恵の結集、人のつながり、現場での細やかな工夫、そして行政も大企業も真似のできないスピード。同友会中小企業の一番の強みが生かされたプロジェクトです。
 同友の湯プロジェクト第2弾は29日にスタートする、被災地からの温泉移動入浴です。まだまだ電気も水道も回復していない地域が多く、震災後一度もお風呂に入っていない避難所や自宅に待避されているお年寄りが沢山います。「少しでも元気を取り戻して欲しい!」受け入れ準備は着々と進んでいます。
 全国のあたたかい想いを被災地の方々に。被災地の懸命に生きる姿を全国の皆さんに。繋がる想いに日々励まされています。